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実感が湧かないとはこの事だろう。
目の前に自分の体がある。でも、心は生前と変わらずここにいる。
死を受け入れられないというよりは、生と死の境目を理解することが出来ないという感じだった。
「きゃー!!」
突然背後から悲鳴が聞こえた。マンションの住人の一人だ。
その声を引き金にして、一斉に多くの住人が窓を開けて外を伺った。
その中の一つ、七階の窓から無言でそこを見ている影。
小林の母親。
母親の顔は蒼ざめ、急ぎ踵を返すとすぐに部屋に引っ込んだ。
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