優良な男

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優良な男

 職場にはお気に入りの(おす)がいる。  顔、良。  声、良。  身長、良。  体格、良。  なにより影で私の仕事を手伝ってくれる。なんて優しい男なんだ。  優しい男は大好物だ。  なぜなら私は、優しい男が受けor攻めという設定が大好きなのだ。  しかしその男、態度は塩対応である。  気さくに話しかけるわけでもないし、仕事に関しても会話は一切したことがない。  私がかけた言葉は「お疲れ様です」のみである。  先日私がファイルする資料を持って振り返ると、なんと後ろにその人が! (ほんま!ほんまか?!今、いまいるやないの~~!目の前にいるやん!声?声かけてまう?お疲れ様っていってもええんちゃう?!)  勇気を振り絞って、ぼそぼそっと「お疲れ様です」と声をかけた。  すると「お願いします」といって私に次の仕事である資料を置いていった。 (くっそ!!!会話成立?!したんとちゃう?!今、会話できたんとちゃいますか~~~?!)  私はテンションが上がってハイスピードで仕事を済ませると、外に出る用事あったため外に出た。そりゃもう天気もいいしるんるんで。  用事も終わって戻ろうとしたとき、塩対応男が社員用入り口から出てくるのが遠目に見えた。 (あっ!あの人やん!いるやんいるやん。帰るんか、あーもうそんな時間か。てか私服やんけ。もえる。鞄とか大学生みたいやん、あの持ち方大学のキャンパス以外で見たことないわ、もえるや~ん)  まだ10メートルは離れている。普段会話もない私が話しかけることなど無理だ。 (あ~帰ってまう~。すれ違いたい~でももうあかん、曲がり角で曲がってまう~)  そう思いながら入り口の方へ歩いて行ったとき、奇跡が起きた。  神は、腐女子の神様は私を見捨てはしなかった。  塩対応男がこちらを向いて、どうやら私に気がついたらしい。 (こっちみてるで、え、気づいたん?!私がおるのきづいたん?!あいつさつするべきやろ?せやろ?でもあかんねん!私にそんな勇気あるわけないやんか!)  ほんの数メートルの距離で頭を下げるかどうか、光の速さで数万年分考えた。  すると神はそこでもわたくしめに、祝福を与えたのだ。 「お疲れ様です」  なんと塩対応男が私に頭を下げてあいつさつをしてきたでないか!  私は平常心を保ちつつ「お疲れ様です」と頭を下げた。 (おまぁぁぁぁぁ!おまぁぁぁぁぁ!この距離でそれやってのけるとか、まじ、まじ、いけてるやぁぁぁぁぁん!!!!)  私は遠ざかるその後ろ姿を見て思った。 (はよ、はよあんさんの(つがい)をみつけてやんよ。番、あーつがい!だれや、あんさんに似つかわしい番!だれやねん~~!)  職場に戻ったら私はすぐに辺りを見渡して、塩対応男の番を探した。  そしてお前は受けなのか、攻めなのか。  悩みに悩んで私はかの者に〝受け〟という選定を下した。
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