付随する思い出

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子供用の傘を見ると、幼少期の思い出が甦る。 あれは忘れもしない小学三年生の梅雨の時期だった。 その日は昼から雨が上がり、傘を閉じて下校していた時だ。お気に入りの傘を持って帰っていると、突然空間にジッパーが現れそれを開いて中から人が出てきたのだった。体を半分出した状態で、 「やあ、少年元気かい?」 と尋ねられたので、コクンと頷いて見せた。 「突然だが少年、その傘を私にくれないかい?これから雨の処へ行かなければいけないのだよ」 それには断固反対だったので、 「いやだ!」 と答えた。けれどお構いなしに、 「勿論タダではないよ、私の持っている物と交換しよう」 と提案してきた。気持ちは渡さないと決めていたが、何と交換するのかには興味が湧いた。 「星屑を集めたサイコロ?それとも一角獣の鬣で作ったお守り?それとも……」 と色々見せてくるが自分には傘より良いと思えるものがなかったので全て断った。 「ならしょうがない、とっておきの物を出すよ」 そう言うとピカピカと光る石を取り出した。 「これは太陽の欠片だよ、交換してくれるかい?」 「やっぱり、やだ」 そう答えると残念そうな顔をして、 「仕方ない、雨に濡れていくとしよう」 と諦めたらしく、ジッパーを閉めながら、 「済まなかったね、少年」 とだけ言うとジッパーを閉めきって、そこには何もなかった様に普通に戻ったのだった。 あの時傘を何かと交換していたらどうなっていたんだろうかと、後になって後悔した。 今の自分と何かが変わっていたかも知れないと思うと、少しだけノスタルジックな気持ちになるのだった。
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