唇で確かめても……

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唇で確かめても……

窓ガラス越しに水滴が上から下へと落ちていく。手にしたグラスには疲れ切った自分の顔が映り、嘘偽りなく暴くから少し苦手なのだ。 (知られたくない事の方が多くて何が悪いのよ……) 心で悪態をつきながらテーブルにグラスを置くと氷がカラリと音を立てた。 務めて不満かあるけでもない人生。だけれど何か満たされない毎日があって。時々、それを埋めるようにお酒に身を委ねてしまうのは仕方ないと言い訳させて欲しい。 「もう、3時か。折角いい感じに酔えて来たのに」 初めはいい。明日を忘れ溺れようという無限の時間を貰ったような気持ちになるから。 それでも時間とは残酷で時を重ねれば残り時間の少なさに焦りを覚えるのが何だか嫌なのはみんな……きっと忘れられない過去の温もりのせい。 「なんで引き止めてくれなかったの?」 もう答え合わせのできない疑問だけが空に解けて刹那に消えたある雨の日。
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