0人が本棚に入れています
本棚に追加
bitter memories
俺の名前は【黒川圭吾】今年の春、都立双羽高校の1年生となる。
クッ・・・ここまで来るの、本当に長かった・・・
っと言うのも俺は余り良い学生生活を送ることが出来なかった。
暗い過去だけどどうか最後まで聞いてほしい。
初恋
そう、それはまだ幼稚園の頃・・同じ【さくら組】のレイカちゃんが好きだった頃の話。
俺の人生のモテのピークは恐らく幼稚園。あの頃は身長も回りの子と比べても大きくて足も速かった。何をやらせても上手くて同級生のお母さんからは恐らく神童と呼ばれていたに違いない。
そう、運動会では常に一番!幼馴染のエリちゃんの家に行けばキスを所かまわずされていたあの時代。思えばあの時が一番幸せだった。
「圭くん大好き」「好き好き!!!」
ああっ・・・何て懐かしい。でもエリちゃんから求愛を受けながらも俺の気持ちはレイカちゃんなんだ。許しておくれ。
けどあの時の俺の人生を変えたのが、同じクラスのジュンヤ。彼は俺より足が遅いし、俺より歌も下手(失礼)
なのに!
奴は完全にレイカちゃんの心を虜にしていた。バレンタインの時はレイカちゃんはジュンヤにチョコを・・(俺は欲しそうな顔で見ていた)
遠足の時はいつも二人で手を繋いでいやがった!(俺は後ろから眺めていた)
挙句の果てには、【自分の好きな物】を発表する場で皆が【先生】【お母さん】(どれも物じゃないが)と発表する中レイカちゃんは【ジュンヤくん】などと言いやがった。しかも親がいる前で!!!!
対抗意識で俺は【レイカちゃん】と言いたかったが母親の前という事もあり、それは言えず代わりに【サッカーボール】などと当たり障りのない物を答えた事。
そんなジュンヤを見ていて圧倒的に自分に無いものを持っていた。
それは照れもせず「可愛いね」などと普通に言えること。
これが幼稚園の年長がさらっと言える事なのか・・・?今思うと彼は何度も転生を繰り返し人生を20回以上ほど経験しているんじゃないのか?いやそれぐらい、さらっと言えるジュンヤが羨ましかった。
当時の俺と言えば先生のパンツを覗いたり、女の子のスカートを捲ってパンツを見たり・・・
(まぁこれはこれで十分変態であり、かなりませている)
結局年長の最後にレイカちゃんに好きと伝えたら、「ジュンヤ君がすきなの」とまるでナイフで一突きされるが如く俺の初恋は散った。
でも流石幼稚園児という事もあり、傷の治りも早く小学校に入る頃にはすっかり忘れていた。
幼稚園・・・この時点で初恋は終わりを告げた。
そして舞台は小学校、俺はここでも数々の失敗を繰り返した。
低学年までは良かったが、高学年になるにつれ勉強は上位から中位・・・そして下位へと階段を下った。いや最早エレベーターの如くの速さで転落していった。
5年生になる頃には、勉強は出来ない、運動も並と下降の一途を辿って行った。幼稚園の頃の神童っぷりは一体どこへ行ったのだろうか?
そんな時最大の危機が自分に訪れている事に気付く事は出来なかった。
知らぬ間に体はブクブクと太り、いつの間にか走る事がおっくうになる体へと変貌を遂げていた。今思うと家族の誰もが止めることはせず。只々見守る事だけをしていた(人のせいにはしたくはなかったが、正直あの時止めていてくれたらと思う事もある。)
神童(しんどう)とは、特定分野において驚異的な能力を発揮する人物、特に少年時代に並外れて優秀であった者に対しての尊称である。(wikipedia引用)
【特定分野(食欲)】【驚異的(体重)】【人物(俺)】まぁある意味、神童ではあるのか?
5年の今となっては女子は愚か男子も寄り付かず、何とかリュウ(幼馴染)と一緒に行動していられた事が救いでもあった。
リュウは幼稚園より前から仲が良く、同じマンションで俺が16階リュウが15階と真下に住んでいた。そんなリュウは胸を張って親友と呼べるそんな存在!
幼稚園の頃は何でもできた僕の側で一緒になってふざけていた。
そんなリュウが、遊んでくれる。それだけが救いだった・・・
小学校では立場も逆転したけど、変わらず接してくれているリュウに付いて何とか過ごしていた夏休み前の出来事
それは朝の朝礼の時
「今日は転校生を紹介する!じゃあ簡単な自己紹介。淀川小学校から転校してきた鈴木恵理さん」
僕の中でその名前を聞いて何かがこだまする。
「圭くん大好き」「好き好き!!!」
ふと朝礼台に目をやると、そこには成長を遂げたエリちゃんの姿が・・・
学校が学区外の為離れ離れになったけど、久々に見たらめっちゃ可愛い。
これは神様からのプレゼントか?朝礼台ではキョロキョロしてるエリちゃん。
分かってるよ、俺の事を探してるんだろ?後で行くから!
俺は何の迷いもなくそう思っていた。
教頭が「鈴木さんは、5-2組になります。」
ビックリしたのは何と同じクラス・・・もうこれは運命!本気でそう思っていた俺が今思うと心から憎い。
朝の会が始まると、先生から紹介が。僕は太った体で最大限に頑張り
「よっエリちゃん!俺だよ・・・圭だよ」と話しかけた
一瞬目が合った瞬間、本気で冷めた目をして一言「どうも」
これが・・・この言葉がどれほど重い言葉だっただろう。次の瞬間エリちゃんは、
「リュウ君!」と呼び近くに行き
「先生、私幼稚園の頃リュウ君と同じクラスでした。もし駄目じゃなければ隣の席でもいいですか?」
何と彼女の思い出からは僕の事はデリートされていたのだ。
先生も「いいわよ」の一言。
何事もなかったかのように授業は始まった。休み時間にはリュウとエリちゃんそしてその取り巻きが色々質問している。
「リュウと幼稚園一緒なの?」「エリちゃんは何処に住んでるの?」賑やかに色んな質問が飛び交っていた。その中で
「ケイゴとも同じ幼稚園だったの?」と質問が飛び彼女の返した言葉は
「あっ、そういえばそうかも。忘れちゃった」
憎い・・・本当に憎い・・・。
そして何て惨めなんだ・・・。
リュウ君、リュウ君呼ぶエリちゃんにリュウが「学校でリュウ君はハズイだろ」とか言ってる始末。
消えたい・・・もう早く家に帰ってカステラを食べたい。
漸く授業も終わり、下校の時間。一人で帰っていると「黒川君」と呼ぶ声が。
振り向くとエリちゃんが居た。
彼女は僕とすれ違い様にこう言った。
「変わったね、会うの楽しみだったのにショックでした。さようなら」
いいですか?僕は告白はしてないんですよ!それなのに一方的に振られた。こんな事ありますか?神様僕に何故こんな試練を?
初めてです、学校帰りに涙を流しながら帰ったのは。
その日から、僕は自信を無くし女子とも喋れなくなりました。そうです女子を前にするともう何も言葉が出てきません。
それから月日が経ち、噂では「鈴木さんリュウ君が好きらしい」とかそんな噂を良く耳にしていた。
リュウはそんな僕を誘っては遊んでくれる本当にいい奴だった。6年生なった今も変わらず側にいてくれて。僕にとっての光になってくれていた。
運動会ではリレー選手として女子からキャーキャー言われる存在へと変貌を遂げたリュウ、そんなある日、僕は教室でリュウがエリちゃんと他の女子と話しているのを聞いてしまった。
「ねぇ?エリは黒川君の事好きって言ってたよ。なんで付き合ってあげないの?」
僕の知らない真実に直面し、知らず知らずの内に僕は意識が朦朧とする中立ち聞きしていた。するとリュウが
「俺さ、ケイゴが親友でさアイツが好きなの知ってて付き合えるわけないじゃん。」
「それにさ、皆ケイゴの事酷い事言うけどさ、アイツ幼稚園の頃は本当に凄くてさ、本当は鈴木も知ってるよな?いつも俺とか弱い子助けてくれてた。そんな幼馴染を俺は裏切れないし、俺まだ好きとか付き合うとか解らないから。ごめん」
何それ!エリが可哀そう。ケイゴなんていなければいいのに!他の女子は次々と酷い言葉をリュウにぶつける。
僕はその場に居ることすら出来ず。歩きながら廊下で涙を流しながら下駄箱に向かった。
6年生も終わりに近づくと、あれだけ仲が良かったリュウとも余り遊ぶことが無くなった。
そこには理由がありリュウに迷惑を掛けたくないのと二人の恋路を邪魔したくなくて・・
徐々に遊びに行く回数も減らして、気が付くと俺はの周りからは女子どころか男の友達すら居なくなっていた。
来年からは中学生、ほぼ同じ小学校に通う子たちが淀川中に進む。
はぁ・・俺はあと三年間苦しい思いをしていくのか。
マンションの窓から外を眺めながら、人生の早送りボタンが欲しいと心から願っていた。
最初のコメントを投稿しよう!