その1。 雪鳥

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 「先生。ちょっと待ってください」 相手がクスリと笑う声が聞こえた。 「先生は俺じゃなくて、お前じゃないのか」 「あら、今は私が教えを受けてるのに?」 セレネは声を返し、アレンの肩に触れた。 「修行中は邪魔が入ると彼…凄く不機嫌になるのよ」 (ささや)くように耳打ちすると、いつもの場所で待っててと、 セレネは軽やかにその人影に走り寄った。 ―――あの赤毛の魔女か?ゼオルグはなぜ、あんなのに肩を持つのだ。 唐突にポーラの声がよみがえる。 エタ―ナリヤで一番の魔力を持つ、生まれついての天才魔導士。 弟子を取らないはずのゼオルグが唯一、許した赤毛の魔女。  アレンは少し、そんなセレネが(うらや)ましかった。
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