その2。 ワルダクミ

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 気付いたらひゃくりあげ、泣いている自分が居た。 アレンは涙を振り払った。ごしごしとぬぐう。  涙じゃない、これは雪だ! そうだ。泣いてる場合じゃない!!  ふいに心に浮かんだ想いに、全身を捕らえられる。 耳に雪嵐の風の音。 頭から直撃し、顔に当たる雪がアレンの体を覆う。  死んだ雛を探さなくてもいいんだ。 残した鉱石を探さなくてもいい。 だって生きてる雛の体内にもそれはある。 生きた雛でもいいんだ! アレンは飛び出した。その意味する事も深く考えず。 その途端。 翼を広げる雪鳥の親。 やば。近づき過ぎてた。 4本の毛むくじゃらの手足が、カギ爪と共に伸びる。 「ゴムニムル、ラージュ」 アレンはとっさに魔力を()った。 (あわ)てて当然、錬成(れんせい)は足りない。 アレンの魔力は、砂と岩石の魔法。 雪陵の岩々を盛り上げ、雪鳥を止める3mもの腕になる。 しかし召喚呪文無しの発動呪文だけでは、強度が弱い。 アレンはゼオルグの様に、詠唱(えいしょう)だけで 足元に錬成陣を開けないのだ。 バサバサとはばたきが豪雪を生み、強い風雪と化す。 風圧が吹雪に代わり、小さなアレンは雪稜から落ちた。 途端に岩々の腕が魔力の四散と共に消滅し、鳥が直線を切る風と化す。 ビュウウ―ー 吹雪! 雪鳥が雪と氷を(あやつ)るって、本当だった。 風雪に身体を巻かれる、雪と風に身体を持って行かれる。 雪鳥がそのアレン目掛け、風と化す。 1直線の風。風雪の嵐。 アレンは落ちた、どこに? 風に転落した小さな体は、雪にもまれ、谷底に落ちた。
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