その2。 ワルダクミ

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           ##  吹雪が止んだ。 数時間後、アレンは落ちた谷底をよじ登っていた。 獣人族のビビット族は、落ちたくらいじゃケガもしない。 ヘタレもしない、その心。 足場のないような垂直の(がけ)に、雪に(すべ)りそうに なりながら、それでもスルスルと登る。 ズルッ・・とっかかりの積雪ごと、もろに落ちる。 くるんと宙返りで、谷間の岩壁に突き出た木の枝を(つか)む。    片腕1本にかかる体重。 ぶら下ったまま、ぴょんと少し離れた岩場に着地する。 両足が雪を摑む感覚に、ワンテンポおいて、ふと顔を上げた。 (ほお)()でる優しい風。 なぜなら、風に呼ばれた気がしたからだ。 「アレン・・何をする気だ?」 風がささやく。 風が(から)まり、青いベールの中から現れたのは ゼオルグによく似た面影。 ひょろりとしたやせぎすの黒髪の青年が、悲しそうに アレンを見る。 「何だ、エンジェルか?どうしてそんな悲しい顔をするの」
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