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足を止めた妻は、ベッド脇に膝をついて、
息子を抱く夫が優しくささやく声を聞いた。
「こわくない・・もう怖くないよ」
夫の首筋にキラキラ石が光る。
チェーンにぶら下がった、赤い魔法石の指輪だ。
それを引き抜いて息子の首にかけながら、複数の呪文を
幾重にも重ねる。
石を依り代に幾重の糸を重ね、織り上げる絹の様に。
まるで不安がる息子をいたわるように。
優しい声と仕草であやすように。
そして無条件に愛するように。
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