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その2。 ワルダクミ
「雪鳥?うん、教えてあげる。けど雛が居たら、私にも教えてね」
卵を見つけた場所から、雛が生まれるかも。
そう言ったらセレネはあっけなく魔法文字を使い、探してくれた。
場所は元の巣から、目と鼻の先だ。
今度はデビーにも、内緒だ。
アイツって誰にでも、ペラペラしゃべるもん。
特に、すばるにバレるとあの心配症だ。
父様か母様にでも話しかねない。
内緒話の俺とセレネの姿にデビーが怒る。
「二人してベタベタしてたら、いいわ!」とゲンコツを食らった。
セレネを庇って二人分、叩かれた俺にアカンベェして
デビーは行ってしまった。
アイツってこの頃、俺とセレネが仲良くしてると焼いてないか?
「デビーにも教えてあげたら?仲間外れにされてると思ってるのよ」
「ダメダメ。俺1人でいいってば」
「そうやって締め出すから。私達だけで何かしてるって、
拗ねてるのよ」
拗ねさせとけばいいんだ。
口には出さないけど、セレネには俺の考えが筒抜けだろうな。
何となればセレネは母様みたいに、心を読む魔法を持っている。
でも、もう1つの俺の本心には気付いていない。
俺は魔力を使われる前に、セレネから離れた。
セレネは隠し事が下手だから、探られてゼオルグに知られるとヤバイ。
危ないって、絶対に止められる。
ゼオルグは妙に勘が鋭いし、母様と同じで識の魔法で、心も読める。
窓を見ると粉雪。
「じゃあね!」
走りだすアレンにセレネは手を振って、やがて背を向けた。
そしてそんな二人を、西風の精霊は見ていた。
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