その2。 ワルダクミ

1/11
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ

その2。 ワルダクミ

 「雪鳥?うん、教えてあげる。けど雛が居たら、私にも教えてね」  卵を見つけた場所から、雛が生まれるかも。 そう言ったらセレネはあっけなく魔法文字を使い、探してくれた。 場所は元の巣から、目と鼻の先だ。 今度はデビーにも、内緒だ。 アイツって誰にでも、ペラペラしゃべるもん。 特に、すばるにバレるとあの心配症だ。 父様か母様にでも話しかねない。 内緒話の俺とセレネの姿にデビーが怒る。 「二人してベタベタしてたら、いいわ!」とゲンコツを食らった。 セレネを(かば)って二人分、叩かれた俺にアカンベェして デビーは行ってしまった。 アイツってこの頃、俺とセレネが仲良くしてると焼いてないか? 「デビーにも教えてあげたら?仲間外れにされてると思ってるのよ」 「ダメダメ。俺1人でいいってば」 「そうやって()め出すから。私達だけで何かしてるって、 ()ねてるのよ」 拗ねさせとけばいいんだ。 口には出さないけど、セレネには俺の考えが筒抜(つつぬ)けだろうな。 何となればセレネは母様みたいに、心を読む魔法を持っている。 でも、もう1つの俺の本心には気付いていない。  俺は魔力を使われる前に、セレネから離れた。 セレネは隠し事が下手だから、探られてゼオルグに知られるとヤバイ。 危ないって、絶対に止められる。 ゼオルグは妙に(かん)(するど)いし、母様と同じで(しき)の魔法で、心も読める。 窓を見ると粉雪。 「じゃあね!」 走りだすアレンにセレネは手を振って、やがて背を向けた。 そしてそんな二人を、西風の精霊は見ていた。               ##
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!