その1。 雪鳥

1/30
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ

その1。 雪鳥

 大きい! アレン・ダンテは手を伸ばし、それを引き寄せた。 目の前に大きな卵がある。 なんと40cm。何の卵だろう?  「アレン、何してんの」 双子の妹のデビーが、背越しにじゃれて来た。  「わっ、待て。落ちる」 アレンは体を支える右腕に、力を込めた。  彼が居るのは岩棚(いわだな)。 垂直どころか反対に傾斜(けいしゃ)した角度に、 アレンはのけぞるようにぶら下がっている。 雪に足場はもちろん、ほとんど無い。 それでもスルスルとここまで登ってきたが、変な体勢(たいせい)のまま 片腕でぶら下ってる所で、背に妹の体重という負荷(ふか)が、かかった。 小さな子供の体は当然のように、バランスを(くず)した。 卵を抱えたまま、雪ごと落ちる。  落ちたら、卵が割れる!
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!