その3。 親子

1/13
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ

その3。 親子

 目の前に炎があって、(ほお)を焼く。 視界が赤に染まり、羽の様な炎がちぎれて。 影の様な人だかりがかすめて、熱を消滅させる。 悲鳴とうめき。 金臭い金属質な血の臭い。  真夜中、幼いルディは悲鳴の様に、泣きじゃくった。 見つけた父の姿に、闇の中から飛び出て夢中でしがみついて、 わぁわぁと叫んだ。 そんな息子のパニックの悲鳴にゼオルグを見つけて、妻は走り寄り、 声をかけようとして戸惑う。 息子を中心にどくろを巻くように空間が(ひず)んで、ルディを 抱く夫の姿が(かす)みをかけたように揺れて、幽霊のようで。 揺れる幽霊のように現実世界から、かけ離れたように見える。 夫は妻に目配せして、近寄るなと視線で言った。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!