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その3。 親子
目の前に炎があって、頬を焼く。
視界が赤に染まり、羽の様な炎がちぎれて。
影の様な人だかりがかすめて、熱を消滅させる。
悲鳴とうめき。
金臭い金属質な血の臭い。
真夜中、幼いルディは悲鳴の様に、泣きじゃくった。
見つけた父の姿に、闇の中から飛び出て夢中でしがみついて、
わぁわぁと叫んだ。
そんな息子のパニックの悲鳴にゼオルグを見つけて、妻は走り寄り、
声をかけようとして戸惑う。
息子を中心にどくろを巻くように空間が歪んで、ルディを
抱く夫の姿が霞みをかけたように揺れて、幽霊のようで。
揺れる幽霊のように現実世界から、かけ離れたように見える。
夫は妻に目配せして、近寄るなと視線で言った。
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