出逢い

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出逢い

ととなか幼稚園には毛が物凄くモコモコのタヌキが飼われています。名はモコモコ。見た目まんまやん。何せ小さい子どもたちがつけた名前ですからね。推定年齢は三歳のメス。まだまだイタズラしたい年頃です。モコモコは、ととなか幼稚園の裏山が宅地工事で無くなる時、工事現場から一匹だけ保護されました。20㎝ほどの体長で弱々しくキュンキュン鳴いていたモコモコ。工事現場の前を通りかかったととなか幼稚園の園長先生が偶然気づきました。「あらあら、泥だらけ、可哀想ねぇ」園長先生は不憫に思い、作業員の人に頼みこんでモコモコを保護したのです。モコモコは、裏山に母親と三匹の兄弟で暮らしていました。工事が始まり、回りの木々がどんどんなくなります。その手はモコモコの巣穴まで及びました。イタズラ好きのモコモコが巣穴の外で一匹だけで遊んでいた時です。物凄い音がし、モコモコが振り向くと巣穴がなくなっていました。モコモコは必死に家族を探します。キュン、キュンと鳴いてあちこちを歩きました。でも、家族の姿は何処にもありません。知らない二本足の動物が沢山、大きな口をした見たこともない動物、早く走る大きな動物がいるだけです。モコモコは怖くなりその場を離れようとしました。でも、沢山いるそれらが行く手を阻んだりして怖くてたまりません。ついに動けなくなり、弱々しく鳴いているところを園長先生に保護され、自宅で飼われることになったのです。 モコモコは園長先生が大好きです。園長先生は、いずれ野にモコモコを帰すつもりだったので名前をつけることをしませんでした。けど、やりにくいのでチチチとか、舌打ちで呼ぶような仕草でコミュニケーションを図ろうとします。モコモコは、チチチと音がするたび、園長先生に嬉しそうに駆け寄ります。「沢山食べて大きくおなり。」園長先生はモコモコの頭を優しく撫でてあげます。モコモコはキュンキュンと鳴き、園長先生の手をペロペロと舐めました。「本当に可愛いねぇ、お前は。」
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