ベンチャー社長の憂鬱

1/4
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

ベンチャー社長の憂鬱

時は西暦2000年、東京の一画にあるマンションの一室で、ひとりの男が泣いていた。 窓につけられたブラインドによって外界と隔絶された部屋には、スチールラックにサーバーが所狭しと並んでいる。 エアコンはついているが、サーバーの出す熱で、決して涼しいとはいえない。 北村たかゆきはハンカチで涙を拭うと、ふぅと疲れたような息を吐いた。 大学生のとき数人の仲間と、ITブームに乗って一旗揚げようぜという軽いノリで起業した。 この部屋はその事務所となっている。 この会社が事業としているのは、いわゆる匿名掲示板の運営だ。 サービス名は『2じゃんぐる』、通称――2じゃん。 サービス開始から約1年。一世風靡とはいえないが、なんとか運営を続けていくだけのユーザー数は、集まるようになった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!