4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ベンチャー社長の憂鬱
時は西暦2000年、東京の一画にあるマンションの一室で、ひとりの男が泣いていた。
窓につけられたブラインドによって外界と隔絶された部屋には、スチールラックにサーバーが所狭しと並んでいる。
エアコンはついているが、サーバーの出す熱で、決して涼しいとはいえない。
北村たかゆきはハンカチで涙を拭うと、ふぅと疲れたような息を吐いた。
大学生のとき数人の仲間と、ITブームに乗って一旗揚げようぜという軽いノリで起業した。
この部屋はその事務所となっている。
この会社が事業としているのは、いわゆる匿名掲示板の運営だ。
サービス名は『2じゃんぐる』、通称――2じゃん。
サービス開始から約1年。一世風靡とはいえないが、なんとか運営を続けていくだけのユーザー数は、集まるようになった。
最初のコメントを投稿しよう!