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精神科は混んでいた。
人それぞれ、何かあるのだろう。
席に座って待つ。
ここは青山診療所。
街の郊外の山にぽつんとあるクリニックだ。
隣の椅子に座っている話好きのおばさんがいろいろ聞かせてくれる。
「電気を消して丑三つ時になるとおばけがでるんです」
などと普通の人が聞いたら笑ってしまうような話を真面目に聞いている。
「おばけは出たのかもしれませんね。」
「えっ?」
「疲れすぎでお化けを見たんですよ。本当にお化けが出たことは間違いない。それほどにあなたは疲れていた。」
「診断書を書いて差し上げますので会社に提出してみてください。出す前に労基署に相談するのもいいでしょう。まあ、やってみてください。」
「ところでこの下においしいパン屋があるのご存じ? そこで … …」
院長は世間話を機関銃のように話し出す。それから先はあまり記憶にない。
処方箋をもらって、弱めの睡眠剤やら安定剤をもらうために山のふもとの
薬局に立ち寄る。
奥月薬局。
最近店を出したてのような、真新しい看板と、居ぬき物件のような古めの店舗の対比が印象に残る。学生のような若い店長が白衣をまとってカウンターに現れる。
店長の 奥月 広樹 は慣れない手つきで処方された薬を用意している。
用意し終えた奥月は塚野に薬を渡し、薬の用法や注意点を説明する。
「お客さん。2本、ジュースをサービスしておきますね。」
新米薬剤師だからか、新規顧客獲得のためサービス精神旺盛である。栄養ドリンクと子どもの好きそうなジュースをサービスしてもらった。
ついでにパン屋によって夕食用の総菜パンとピザやらコーヒーを買いこんで
塚野は家に帰る。
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