人員不足とカバさんのサタンド

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人員不足とカバさんのサタンド

 ハピネス栄養課は、深刻な人員不足だ。  カバさんの話によると三年前から良くなっていないらしい。  今日も、僕は昼間の盛り付けを、カバさんは調理・朝・昼・夕・100人・140人・100人を終えて事務所で休憩していた。 「あー疲れたー!」っと窓から見える海を眺めカバさんが延びした。  開け放たれた窓からは潮の香りを含んだ爽やかな風が迷い込み、ザザーっと言う波の音と共に逃げていく、そんな落ち着いた雰囲気がここにはあった。 「調理出来る人もう一人入らないかなあ……。」カバさんが外を眺め不意に話始めた。 「そうですよね。カバさん調理やって、献立作りと発注もやっていたら大変ですもんね。」  それは本当思う。特にカバさんは朝6:30からの早出で、13:30まで動き続けてそこから15:00まで休憩、15:30定時だから実質事務所に入れるのが30分間しかない。残業必須である。  しかもカバさんは結婚していて子供もいる。残業はあまり出来ないといって休憩時間を取らずに仕事をして、それでも一時間位は残業していつも帰っている。本当に大変だ。 「いやー違うんだよ。僕が料理するのはいいんだけどさあ。森川さんがさあ……。」  全くこの人は真面目だよ……。 「森川さんさあ、昼勤だと仕事がハード過ぎるから遅番の方が良いと思うんだ。今、料理する人員として昼勤から離れられないけど、適材適所を考えると遅番なんだよね。」 「適材適所ですか?」 「そう!出来ない人にやれって言うのは古い考えなんだよ。今の時代に合わない。」  はあー、っと彼は深く溜息をついた。 「君が来る前に実現させたかった理想があったんだ。」  カバさんは淡々と語ってくれた。  今、朝の早出は今は二人体勢で、しかも何故か6:30からなのに6:00より前から来なくては行けないという決まりがある。  カバさんはそんな決まりは壊したいと思っている。  三人体勢にして標準の時間にする事。  新しい料理の専任を育てて料理長を育成する事。 「ただ、唯一実現したことがあるんだ。それは君が来てくれた事だ。先頭に立てる管理栄養士を育成する事。」  彼は疲れた目でこちらを振り向いた。 「ここを腐らせている原因は本院にもある。」  彼は語り始めた。  そして、彼の背後に怒りの幻影(サタンド)が見えた気がした。  
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