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 ずっと長いこと、スマホの向こうに顔の見える読者はいなかった。それが今、目の前にいる。なんとも気恥ずかしい。  食い入るように真剣な顔をして、スマホの画面をなめ回すように読んでいるミナコの姿を長机を挟んで見たくない翔は、図書室の新入荷した単行本に目を落とすも、ろくに文字を拾っていない。むしろ、彼女には家に帰って読んで欲しいというのが正直な気持ち。  眉を動かしたり、半眼になったり、たまに口端を軽く上げたり。そういう彼女の表情が気になって仕方ない。  今読まれているのは48作目。先週完結したものだ。  翔の視線が読者の顔と本のページを3:2の割合で行き来していると、ふとミナコが顔を上げ、鼻で息を吐いたので、彼は彼女の目と唇を恐る恐る見た。そこへ、彼女のわずかにへの字の口が薄く開かれる。 「なんていうか」  いったん、彼女は言葉を切った。
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