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でもそれは、私宛てじゃなかった。
悔しくて、恥ずかしくて、虚しくて、別れを告げられた瞬間は何も言えなくて……
問い詰めてやろうと思った時にはもう、連絡がつかなかった。
それから半年後。共通の友人から電話があった。
「葬式ぐらい出たらどうだ?」と。
彼の葬式の日、式に顔すら出さなかった私を非難する電話。
だけど、私はその電話で初めて彼が死んだ事を知った。
病死だった。
私と別れる前に発覚し、その時にはもう手遅れで、私と別れてすぐに入院して闘病の末に死去。
何も知らなかった。知らせてもらえなかった。
それは別れた時よりも更に大きな裏切りだった。
「レイコ?」
黙ったままの私に、ユキトが不安そうにもう一度声を掛ける。
言いたい事は山ほどあった。怒鳴りたかったし、なじりたかったし。
でも、目の前にしたら言葉が出てこなくて、とりあえず目に付いた事を口に出した。
「何で、縛られてんのよ」
ユキトは縛られ、椅子に括り付けられている。
「これは、逃げようとしたら、あのキツネ顔の人にやられちゃって……縛ってでも連れてこいって言ったらしいね」
「……」
覚えてないけど、言ったのだろう。
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