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きっと逃げると思ったし、案の定逃げたみたいだし。
私は、まだ効果が切れてもいないのに、桃源茶をもう一口飲んで、最初の質問を決めた。
「ねぇ、あの指輪、誰にあげたの?」
「あの指輪って?」
「ずっとジャケットに隠してたでしょ?」
「……な、何で、知って!?」
ユキトは顔を赤らめてガタガタ揺れたが、身動きも取れないので観念して答える。
「誰にもあげてない。今もポケットの中だ」
「私にくれる予定だった?」
「……違うよ」
嘘だ。
ユキトの視線が右横に流れた。嘘を吐いてる時の癖だ。
私は大きく息を吐く。
彼が一瞬でも私と同じ未来を見ていた事が嬉しくて、それと同時に一緒にいる未来を捨てた事が悔しくて涙が溢れてくる。
「私ってそんなに頼りなかったかな?病める時も共に歩める人間じゃなかったのかな?」
「……」
「別れた後、ずっと考えてた。あの指輪は誰が嵌めるんだろうって。私の何が悪かったんだろうって」
「レイコは何も悪くない……」
「じゃあ何で病気の事教えてくれなかったの?一緒に闘わせてくれなかったの?」
「だって、レイコは俺より頑張っちゃうじゃん!無茶するじゃん!余命数ヶ月の俺の為にレイコの大事な時間を使って欲しくなかったんだ!」
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