深夜3時のティータイム

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ユキトの大声を初めて聞いた気がした。 彼自身も自分の大声に戸惑っているようだけど、それでも言葉を続けてくれた。 「本当は、指輪はレイコの為に買った。渡すタイミング、ずっと考えてた。でも、健康診断で異常が見つかって、自覚症状はなかったけど、精密検査で余命数ヶ月とか言われた。その時思ったよ。指輪渡す前で良かったって。君の時間を俺で縛り付けなくて済んだって」 「バカ!あんな振られ方して、こんな死に方されて、貴方の事が不完全燃焼で燻って、今の方がよっぽど縛られてるわよ!」 「……ごめん。レイコには俺の事忘れて幸せになって欲しかったんだ」 「バカ」 「ごめん」 「バカ」と「ごめん」の繰り返しは、付き合う前の懐かしい思い出を呼び起こす。 友人数人での旅行中、私はストラップを落としてしまった。心当たりは全くなく、私は探す事を諦めた。 彼はその後皆と別れて単独行動をした。 集団行動のできない人だと思っていたら、帰りがけに私のストラップを持って戻ってきた。 お気に入りで無くして悲しかった事がバレていて、わざわざ一人で探してくれたのだ。
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