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ビルを出て時間を潰せる場所はないかとググる。
わかっていたが、この辺に平日真っ只中でも明け方までやっている店はほぼない。
家は二駅ほど先のマンションを借りている。
やるべき事を終えたら着替えに帰るつもりだったが、先に帰った方が良さそうだ。
気持ちの良い風の吹く夜だっので、たまに歩いて帰る道とは違う道を気ままに歩いてみた。
少しして、街灯とは違う灯りが見えた。
近付いてみると、クラシカルな西洋風の木造建築が建っており、せり出した屋根には明かりの灯ったランプが下がり、営業中の札を照らしている。
窓ガラス越しに見えた店内には、ちらほらとお客の姿も見えた。
見た目はカフェだが、この時間の営業ならバーだろう。
せっかくなので入ってみれば、カランカランと小気味の良い鈴が鳴り、カウンター内にいた男が出てきた。
「佐伯で予約の方?」
「あ、いえ、予約はしてないんですが……」
店内には二人掛けのテーブル席が五つ、入り口横の窓側に三つと店内右奥に二つ並んでいる。後はカウンター席が五つ。
お客はお一人様が二組だけ。
一人は中年女性で、電話でもしているのか、うんうん頷いて相槌を打つ。もう一人は老人で、ボケているのか、一人で喋りまくってる。
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