深夜3時のティータイム

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キツネ男が言いながらコンコン笑い、その奥の猫顔の女が同意してフニャフニャ笑う。さらに奥の犬顔の男も二人に合わせてワフワフ笑った。 さながら動物たちの合唱である。 バイトらしい店員はムスッと機嫌を損ね、それを隠しもせず新たに来た客に応対した。 「佐伯で予約の人?」 「あ……はい」 ぶっきらぼうな応対に戸惑うも、佐伯という女性は案内された席に向かう。 お出かけ仕様な装いの女性。店内は今が深夜三時である事を忘れそうになる。 「あの、姉はもういるんですか!?」 「まだだよ。先に注文を」 佐伯さんは情緒不安定らしく、ヒステリックな声を上げたかと思うと、バイト君からメニューを奪い左上段を躊躇なく指差した。 十万の品だ。 「これで!」 「初めてな……」 「これが一番姉と長く会えるんでしょ?お金ならあるわ!」 バイト君の声も遮って、厚みのある銀行の封筒を鞄から出す。 バイト君は不躾にもその場で封筒の中を確認し「わかりました」とメニューを下げたが、カウンターに戻っても何もしない。 少しして扉が開いてもいないのに、カランカランと鈴が鳴った。 「ちわっ!予約の佐伯でっす!」
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