深夜3時のティータイム

8/17

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「香りが切れかかってる。もう一口飲むといいよ」 促されてもう一口桃源茶飲めば、甘みが口の中に広がって、香りが私の全身を包み込む。 透けていたキツネ男がまたはっきりと見えるようになった。 「君、もう気づいてるでしょ?窓際テーブルにいる客の片方は死者だ」 「お婆さんと少年は死んでるって事?」 「そうだよ」 「じゃ、あんた達と奥の四人は?」 「俺らはこの世とあの世を繋ぐ神獣で、奥は観光に来てる神様達。この店は桃源郷直送の桃で作った飲物が有名なんだ」 あの世とか神獣とか意味不明だが、不可思議な現象が実際に目の前にある。 これを説明する考えは三つ。 一に、幻覚作用のあるヤバイ飲物を売っている店。 次に、大掛かりで悪趣味なドッキリ。 最後は、夢。私は今も会社のデスクにいて、寝落ちてる。 夢が一番あり得る。 今しがた食べたケーキの異常な不味さも、現実とは思えない。 「会計を。一ヶ月で」 気付けば老人がカウンターに来ていて、慣れた様子で机に置かれた乳白色の石に手をかざした。 石がフワリと一瞬光って消え、老人は帰っていく。 「一ヶ月ってのは……」 「もちろん寿命だよ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加