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スイーツと君
「3時って良いよね、私好き。」
眩しいほどの白い歯を少し覗かせて、君が呟く。
「なるほど、君は甘いものには目が無いしね。まあ、3時じゃなくても御構いなしに食べているところ、何度も見た事あるけどなあ」
と答えてからすぐ、僕はいつも一言多いと君によく叱られることを思い出した。
「うるさいなあ」
案の定、君は頰を膨らませつぶらな瞳でこちらを軽く睨みつけた。
君は事あるごとに話題のスイーツに行きたい、ここの新作を味見に行きたいと言い、これまで僕は何度となく同伴していた。させられていたと言うべきか。
程度を弁えていない生クリームや砂糖をあまり好きになれない私にとって、スイーツ巡りはどちらかと言えば気が進まないデートプランだ。だがそんな小さな問題はいつも君の屈託無い笑顔に全て上書きされ、見えなくなっていた。
「私たち、もう2年になるんだね。そろそろこれからの事とか、考えたいな。」
もし君とこの先もずっと過ごせたら、どんな未来が待っているんだろう。平凡な家庭を持って、楽しく暮らすのだろう。
もし子どもができたらどうなるだろう。やっぱり君に似て、甘いものが好きな人に育つのだろうか。やれやれ、これ以上スイーツ巡りに連れて行かれるなんてたまったものじゃないな。
辛い事もたくさんあるのかもしれない。けれど、君の笑顔のためなら、どんな事も乗り越えていけるような気がした。
''ピピピッピピピッピピピッ"
僕の考えを遮るように、不意に君のバックの中からアラームが鳴る。
「はい、本日もレンタル彼女サービスをご利用頂きありがとうございました。来週もお待ちしております」
そう言い残して足早に立ち去る君の後ろ姿は、夏の太陽に白いワンピースが輝いていた。
そういえば君は、いつでも15時までしか指名することが出来ない。
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