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それから、マナとビルは、仕事中や食事中に目が合うと、笑い合うようになりました。それが数日続いたのちの午後3時、ビルはマナの家に近づいてきて、窓ごしにマナに話しかけて来ました。
「君、名前なに?」
マナは戸惑いましたが、少し窓を開けて返事をしました。
「名前は、マナよ」
「マナ、君のパンケーキ、おいしそうだね」
ビルは、マナのベッドの机の上にあるパンケーキを見つめて言いました。
「ありがとう。あなたがいつも食べているクッキーも、おいしそうね」
マナがそう言うと、ビルは目を見開いて驚きました。
「あれが? みんなからは『レンガみたいでかたいしまずい』って言われてるよ! レンガみたいなクッキー作れるならレンガ作るの向いてるかもと思って大工になったし」
ビルは、ハハハと笑いました。作ったお菓子を「まずい」と言われるのは、お菓子の妖精にとってとても不名誉なことなのですが、あまり気にしていないビルは、とても明るい性格のようです。マナもつられて笑ってしまいました。
「マナはこの家に一人で暮らしてるの? 家族は?」
「家族はみんな死んでしまったの。だから一人よ」
「そうか。寂しくないかい?」
「寂しいけれど、もう慣れてしまったわ」
「そう……」
ビルがそう返したとき、ビルの仲間の大工がビルを呼びました。
「ああ、昼休み終わっちゃう。マナ、またな」
そう言ってビルは、仕事場に戻って行きました。
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