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次の日もビルは話しかけて来ました。
「やあ、マナ。今日のパンケーキもおいしそうだね」
「ありがとう」
「君のパンケーキ、人間界に持って行ったりしないのかい?」
腕のあるお菓子の妖精は、人間界でお菓子を作ったり、お菓子を持って行ったりします。それは、お菓子の妖精にとって名誉なことでした。お菓子の素晴らしさを広めることになるからです。
「私、体が弱くて。パンケーキ一日一個作るのが精一杯なの。人間界にはとても行けないわ」
人間界に行くには、それなりに体力がいります。それに、人間界に行ったところで、お菓子を一日一個しか作れないのでは、できることがほとんどないですから、マナは人間界とは無縁の生活でした。
「そうなのか。悪いこと聞いちまったな。まあ俺も菓子作るの下手すぎて人間界には行く機会ないしな。その代わり、お菓子の国を良くするんだ。いい家が並べば、素敵な街になるだろ?」
「ふふ、そうね」
「それにしても、一日一個か。君のパンケーキ、食べてみたかったけど、もらったら君の分がなくなっちゃうもんなあ」
「でしたら、半分どうぞ」
「半分ももらっちまったら君の腹がふくれないぞ」
「じゃあ、あなたのクッキーを少しちょうだい」
「俺のを!? まずいよ?」
「いいのよ。私が食べてみたいの。あなた、とてもおいしそうに食べているもの」
「わかった。じゃあ、俺のを一口あげるから、君のを一口ちょうだい」
「はい。どうぞ」
マナはパンケーキをナイフで一口切り取り、皿ごとビルに差し出しました。ビルは、そのパンケーキのかけらを手でつまんで口に入れました。
「ふわふわですごくおいしいよ。マナは天才だね」
「ありがとう」
マナも、ビルのクッキーをかじりました。ビルのクッキーは、マナが今まで食べた中で一番かたくて、本当にレンガのようでした。だけど、よく噛むと甘くて、おいしいと思いました。
「少しかたいけど、おいしいわ」
マナがそう言うと、ビルはとても驚きました。
「ほんとに? おいしいなんて初めて言われたよ!」
ビルはとても喜びました。
「よかったら、明日も一口くれないかい?」
「ええ。私にも一口ちょうだいね」
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