03:旅人と平原

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――――――――――― ――――――――――――――――  プチ魔物騒動から一夜明け、ボロ宿屋の店主によろしく伝えて足を運んだのはギルドだった。  さーて今日こそ仕事しないとなー。  飯にありつけねぇからなー。  あ、あとついでに宿代も稼がないと。  昨日散々な目に遇ったけど、やっぱここは空気が気持ちいいからね。もうちょっとだけこの国にいたい。  ……いやまてよ?あやつにバレなきゃ野宿してもいんじゃね?  いいよね? いいよね!  よし、今日こそ野宿してやるぞー!おー!  願わくばもう二度とどこぞの第二王子サマに会いませんように。  昨日と同じくギルド内の一角にある依頼掲示板とにらめっこ。  他の冒険者や旅人と時々ぶつかったりしながらもじっくりと隅から隅まで眺める。  冒険者っつーのはランク上げを目的とした輩の総称な。  ランクとか気にせず自由に世界各地を練り歩く旅人とは根本的に違う。  冒険者は自国から出て他国に渡ることは滅多にない。自国のギルドに名前や能力諸々をギルドカードに登録し、自分の力量に合った依頼をこなす。  旅人は特定の国のギルドに登録することはなく、あっちをふらふらこっちをふらふらと世界各地を風の如く飛び回っている。  各国のギルドで旅人用の簡素なギルドカードを発行すれば依頼は冒険者と同じく受けることができるが、その旅人用のギルドカードっつーのがちょいと面倒だ。  冒険者やギルドカード発行を義務付けられた一部の高貴なお方は自分の名前と能力をギルド職員に告げて事務的な作業を終えたらギルドカード完成となるが、その時点では全員最下位ランクだ。  だが一方の旅人は、名前と能力を告げた後にあらゆる力を測定する特殊な水晶に手を乗せなければいけない。  あらゆる力というのは、剣術や武術、知能など様々な分野のことを指す。  その中には己の持つ能力も含まれる。  能力の強度、熟練度、性質などが一瞬で読み取られ、適正ランクが弾き出される仕組みだ。  冒険者と同じ方法でギルドカードを発行すると、自国から出ない冒険者や国の重鎮は地道にランクを上げれるけど、世界を股にかける旅人は国を移動する度に最下位ランクからやり直さなければいけない。  最下位ランクだと受けれる依頼も限りがあるし、長期間同じ場所に留まることがあまりない旅人にとっちゃ拷問だからな。  万が一実力の高い旅人が自国に流れてきたときに自国じゃ対応しきれない依頼を押し付ける意味合いでもこのような方法が用いられているのだ。  実力を隠したいやつにとっちゃいい迷惑だがな。  一瞬で自分の力量をさらけ出すとか何その公開処刑。  水晶さんは馬鹿正直に答えちゃうんだぞ?  ワタクシ、嘘なんてつきませんのよ!誤魔化しても無駄ですわ!おほほほ!ってか?  カチ割ってやろうかてめぇ。  うーん、やっぱ何度見ても採取の依頼はないか。  ふむ。潔く討伐系の依頼受けましょうかね。  能力を使わなくて済みそうなやつはどこですかいなっと。 「なぁ聞いたか?ガンダールに魔物が出たらしいぞ」 「はぁ!?警備兵は何やってんだ!」 「兵士に怒ってもしょうがねぇって。その魔物、Bランクだったみたいだし」 「ああ……警備兵はCランクだったな。なら突破されても仕方ないか……」  ガンダールとは昨日泊まったボロ宿屋のある小さな町。  フォルス帝国の端にある、宿屋と民家と細々経営してる小さな商店くらいしかない小さな町。  青熊野郎が出没したとこだ。  情報回んの早いねぇ。一晩しかたってねぇってのに。  暇な主婦達の井戸端会議にでも話題が上がったのかい?  ちなみに今いるここはガンダールのふたつ隣の町・フレイリア。  ギルドなどの主要施設や大きな商店などが密集しててガンダールとはうってかわって人口密度がひっじょーに高い町である。  すっげぇぞ。一歩外に出たら人の波に流されっからな?  昨日もそうだったけど、ギルドに入るまでに何度流されかけたことか……  人口が少なくてのどかなガンダールが早くも恋しくなってきたぜ。  え?魔物騒動があったってのにのどかとはこれいかにって?  あんなもん羽虫ぷちって潰すのと同じじゃん。  ノーカンだノーカン。
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