03:旅人と平原

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 こんな人の多い場所では話せないからとロイド・フォルスがギルド長を呼んで客室の使用許可をもらい、ギルドの奥へとずんずん進む。  ちっ、王族の権力ここぞとばかりに振りかざしやがってボンボンが!  テーブルを挟んで二つあるソファに対面して座り、さっさと用件を言えと言わんばかりに足をカツカツ鳴らす私の心情を汲み取ってロイド・フォルスが切り出した。 「昨日はごめんね。俺の言い方が悪かったよ。反省してる」  眉尻を下げて謝罪から始まったそれにカツカツ鳴らしていた足を止めて目をぱちくり。  ……え?  てっきり昨日と同様永住しろだの何だの説得しに来たもんだと思って構えてたのに。  頬を掻いてどこか困ったように笑っている目の前の美男子凝視してしまった。 「永住は言い過ぎた。期限つきでいいからこの国に留まってくれないかい?」  期限つきと聞いて眉がぴくっと動く。  目線で続きを促せば、 「10日後陛下が帰還する。それまでフォルス帝国の防波堤になってほしいんだ」  王サマが帰って来るまで、ねぇ……  Bランク以上の兵士が国境を警備すりゃ済む話だろ。  なんで私に白羽の矢が立つ?  まさか本当に高ランク兵士ごっそり王サマが持ってったとかじゃないよな?  ぐっと眉間にシワを寄せるも、すぐに笑みを張り付けて取り繕うロイド・フォルスを見て、悟った。  そのまさかだ。  ふぅ、と小さくため息をついて背凭れに身体を預ける。  この国は居心地がいい。  そりゃ少しの間は観光がてらゆっくりしようと思ってたけど、10日もいるつもりはなかった。  長くても3、4日。それ以上は長居する気は更々なかったんだ。  ここらに特別旨い魔物もいないし、何より道端じゃなく宿屋で寝ろって誰かさんに怒られたしなぁ。  ぶっちゃけ長居するメリットがない。  よし断ろう。  てなわけでロイド君、返事はノーで。 「そっかぁ。もし引き受けてくれたらどこでも自由に寝ていいよって言うつもりだったけど、仕方ないね」  残念そうに肩を落として立ち上がったロイド・フォルスの腕をむんずと掴む。  おいおいロイド君よ。どうして先にそれを言わなかったんだい?  そんな条件出されたら、そんなの、そんなの……  引き受けない訳ないじゃーん!  ぱぁぁっと自分でも表情が明るくなるのが分かる。  鼻息荒くロイド・フォルスの背中をばっしばっし叩く。 「いった……力加減覚えてねゴリラ娘」  ロイド・フォルスの苦言も耳に入らない。  だぁってー!超うっれしーんだもーん!  美味しい空気を吸いながら! 絶妙な硬さの地面に寝転がる!  これぞ私の求めてた生活環境だぜフゥゥゥゥゥ!! 「なんてチョロい……なんか急に不安になってきたなぁ」
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