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人でごった返しているフレイリアのギルドでギルドカードを発行して複数の依頼を受注した後、ロイド王子にギブアンドテイクで任された仕事をちゃちゃっと終わらせようとルーテル平原に向かったのだが、何故か道中ずっとロイド王子が傍を離れなかった。
もしやきちんと職務を全うしているか監視するつもりか?と問えば、なんと王子サマ自ら私に同行して狩りに行くと言い出した。
これには驚いたが、魔物の肉を国民に提供することに関してまず自分が先に毒味すると口にしたのもそうだが責任感が強いのだ。
てっきり平原の魔物を私に討伐させてその肉を寄越せと言ってくるかと思いきや予想は外れたようである。
ふむ、とひとつ納得したがそこで問題発生。
なんとロイド・フォルスのやつ、武器を何一つ持っちゃいなかったのだ。
普通は王族や貴族などの身分が高い人間は最低でも護身術の他、剣術は叩き込まれる。
オーソドックスで一番扱いやすく、万が一に備えて身を守るのに打ってつけだからだ。
そのため身分が高い人達のほとんどが剣を所持している。
稀に剣ではなく別の武器を所持していたり、武器そのものを所持せず生活している王族貴族もいるが、それは剣術の才能が絶望的に皆無なごく一部の者だけだ。
それ以外は基本剣を装備しているはず……だが、ロイド王子のどこを見てもそれらしきものは見当たらない。
目を凝らして全神経を研ぎ澄ませても剣以外の武器を隠してる訳でもなく、正真正銘丸腰だった。
当然武器も持たない王族(おにもつ)を連れていくのは憚られ、ロイド王子から逃げるように人々を掻き分けて目的地へと向かったのだが……
ロイド王子、追い掛ける。
私、逃げる。
ロイド王子、まだ追い掛ける。
私、当然逃げる。
突如として始まった鬼ごっこ。
幸い人が多かったからロイド王子を撒くのにそう時間はかからなかったけど、このときがめっちゃ疲れた……
だってロイド・フォルスのやつ、すんげぇキラッキラな笑顔浮かべながら追い掛けてくるんだもん。
アレだよ、恋人と楽しそうに追いかけっこする大昔の古いドラマのワンシーンに出てくる彼氏役の男を彷彿とさせる笑顔だよ。
恋人やロイド王子を慕う女なら頬染めて足を止めたりしたかもだけど、私には一種のホラーにしか見えんかった。
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