02:旅人と宴会

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「現国王が即位してからというもの、国内は荒れに荒れまくってる。とんだ愚王だよなぁ。アイザック国との和平条約蹴ったせいで戦争の臭いがプンプンするし、そんな空気お構い無しで外遊に行っちまうし。しかも帝国の防波堤とも言うべきブラッド王子まで連れてっちまってよぉ!帝国騎士団もほっとんどいやしねぇ!ったく、自国滅ぼす気かよぉ!」  おーおー不満タラタラですなぁ。  いつの時代にも手の施しようがないくらい駄目駄目な愚王っているんだねー。  そういうふうに育てた周りの環境のせいだろうよ。  少年時代に甘やかされて育ったに違いない。  いや待てよ?もしや逆にめっちゃ厳し~く育てられたが故の反動かい?  どっちにしろ矯正しなかった周りのせいじゃ。  私にゃ関係ねぇか。考えんのやーめよ。  すっと静かに立ち上がり、床に座る兵士達の合間をぬって出窓の外へと乗り出す。  そのまま器用にひょいひょいっと屋上へ上る。 「あれ?エリーさん?ぇ、あれっ!?」  私がいなくなったことに気付いた爽快少年の戸惑った声を聞きながら屋上に寝転がる。  ふっふっふ。私の隠密スキルを舐めるなよ?  気配を殺した私を見つけるのはなかなかに至難の技だぜ?  んんん~!コンクリート最高!  でも清潔さを保ってるせいか土の匂いがあんましないな。兵舎のくせに。  減点20点!  美しい宝石が散りばめられた夜空をぼんやりと眺めながら今後のことを考える。  とりあえず明日は採取の仕事探すとして、もしなかったら魔物討伐だな。  楽に稼ぐならやっぱ高ランクの依頼だよなー。  この国から西に進んだ平原に氷でできた花があったはず。真っ赤な氷の。名前忘れたけどたしか触れた者の血を吸い取って養分にするとかそんな感じのやつ。吸血鬼かよ。  あの花の採取依頼が一本5000ゴールド。  今夜泊まるはずだった宿屋の代金の約三分の一。  儲けもんやな。  あれちょっと待てよ?その依頼って西の平原から少し進んだ先にあるアース国がごっそり持ってってるよな?  うわーマジかーこの国にそんな美味しい話はないかー。  じゃあ東の森に咲く緑色の風船花はどうだ?  かなり効き目のある回復薬の原材料だし、一本1500ゴールドと氷の花より金額低いけどいっぱい採取すれば儲けもんだ。  あ、でもその依頼この国に来る前に片っ端から片付けちゃったわ。  私の馬鹿野郎ぉ!!  他にがっぽり稼げそうな採取の依頼なんてここら辺にゃなかったはずだし、ちまちま稼ぐのもめんどいから却下。  つー事はだ、必然的に魔物討伐せにゃならん訳だ。  採取と違って魔物討伐なら低いランクでもそこそこ稼げる。  そりゃ民を脅かす連中を殲滅すんのに稼げないなんてことがありゃギルドの冒険者共が反乱起こすわな。  もしくは別の国にお引っ越しするか。  どっちにしろ国の戦力がた落ち。じゃあ金出すから討伐して下せぇ!って下手に出るのも頷けるってもんよ。  こっちも低ランクの魔物ちまちま討伐するの面倒だなー。  けど高ランクの魔物だと国からちょっと離れるんだよなー。  がっぽり稼げて近場で済ませれる、そんな都合のいい依頼があればいいんだけど望み薄かなー。 「宴会の主役がこんなところで油売ってていいのか?」  突然降りかかった声。  それと同時に寝転がる私を上から見下ろす麗しいお顔。  今日だけで何度見せれば気が済むんだと思いたくなるロイド王子の無駄に整った美しいお顔が……って近い!!  ゴッッ!!と勢いよく頭と頭がコンニチハ。  そら目の前に人の顔があんのに起き上がったらぶつかるに決まっとるわ。  おでこを押さえて踞る私とロイド・フォルス。  おーいてて……ったく、ロイド・フォルスがいきなり高レベルな顔面偏差値ぶつけてくるから…… 「……っつ、人のせいにするな暴力女」  野生児の次は暴力女かい。口悪い王子様やな。  つーか百パーあんたのせいだろ。普通の女なら一目惚れしそうな綺麗な顔で迫ってきやがって心臓に悪い。  まぁ私の好みは無精髭が似合うダンディーな色男だから王子のフェロモンに惑わされたりしないけど。  枯れ専か……と呟きながら隣に腰掛けたロイド・フォルスの頭をひっぱたきつつ本題を引っ張り出した。  わざわざこんな大袈裟な宴会を開いてまで私を引き留めたのは、それなりの理由があんでしょ。
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