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01:旅人と王子様
星とは破壊の産物である。
小さな星同士が衝突すれば両者共に粉砕するし、大きな星同士で衝突しようものなら宇宙の大事故に繋がる。
最悪どちらも消えるだろう。
中には小さな星の欠片達が結託してデカい星に侵略するやつもいる。なんて強かなんだ。
そう。
我々の住む星は侵略された。
その強かな連中に。
隕石という名の小さな星が銀河を形づくって襲撃したのだ。
それが世界にもたらした影響はとてつもなく大きかった。
とにかく大きかった。
まず栄えていた文明が著しく退化した。
進んでいた化学は見事にぶち壊され、再度発展させようにも材料が全て消し炭にされてしまえばできる訳がなく断念。
人口も大幅に減った。世界から3分の2もの命が一瞬で消えた。
星が星を食らい、多くの命が散ったのだ。これを破壊の産物と言わずしてなんと言う。
全く神様もとんでもないことをしてくれる。星同士をぶつけて外野で観戦でもしてんのかね?
紙相撲の要領で大量に命生産しといて気紛れに表舞台から退場させるとかどんな神経してんねん。
あれか?
人間増えちゃって管理すんのめんどーい、じゃあ減らしちゃえーってか?
オメーがつくったもんだろうがきっちり最後まで面倒見ろや。
失うものは多かった。
だが暴れ馬ならぬ暴れ星がもたらしたものは人類の損害だけではなかった。
なんと隕石が地面に吸い込まれ、そこに迷宮が出現したのだ。
落ちてきた隕石の数はざっと百。実際はどうか分からんけど。
つまりは百もの迷宮が世界中に散らばっているのだ。
まぁその迷宮の中には魔物がウジャウジャいるけどな。
プラマイ比率おかしいやろ。
あと、これも隕石効果なのか、なにかしら能力を持った人間が急増した。
能力というのはこの世界において普通の人間ならばできないような超常現象を起こすものである。
その力は多岐にわたり、火や水などを出現させ操るといった時に生活の役に立ち、時に戦闘にも駆り出されるような能力もあれば、速読スキルが跳ね上がるとかそんなしょうもない能力もある。
あと極稀に身体の一部が異常に特化した能力を有する者もいる。
いずれも、一人につきひとつしか能力は宿らない。あ、もちろん能力を持たない人も大勢いるけどね。
物語とかだと魔物とか迷宮が出てくるやつって大体魔法が飛び交う世界観だけど、現実はそんな夢いっぱいじゃないのだよ。
色んな属性の魔法?なにそれオイシイの?
こちとらひとつの能力フル活用して死に物狂いで毎日生きとんのじゃボケナスがぁ!と、世界中の能力者が心の中で叫んでいるに違いない。
そして長ったらしく前フリを語っているこの私、エリー・ケラーもその能力者のうちの一人である。
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