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暗い路地裏から
「ニャーオ……ミャーオ」
微かに猫の親子の声が聞こえて来た。
何処だろうと見渡すと小さな廃墟の前に段ボール。
その中には母猫と仔猫が2匹の合わせて合計3匹。
母猫は土砂降りから仔猫達を守るようにペロペロと毛繕いしている。
仔猫達は母猫のお乳を飲んだり、ミャーミャーと小さな鳴き声で懸命に助けを求めるかのように鳴いている。
母猫は時折、ジッと俺を見つめては
『助けて欲しい』
と言わんばかりのうるうると目を輝かせる。
俺も猫は好きだし、飼いたいのは山々なのだが……。
俺の母さんは過去に猫に引っ掛かれて以来、猫が苦手なのだ。
元の飼い主だろうか、段ボールには
『拾ってやれ』
と命令している。
こんな小さな命を大事に育てられないなら、最初から面白半分で生き物を飼うな!!
と突っ込みたい俺がいた。
近年の異常気象には本当に困る。
夏は暑すぎるし、この梅雨の時期だって………大雨だったり、降るのかと思えば、パラつく雨だったり…。
「………ごめんな。俺、どうしても飼えないんだ。けど…」
俺は持っていた傘を段ボールに被せるように置いた。
これで猫の親子も暫くは雨風を凌げるだろう。
「これをやるから……。本当にごめんな!!」
俺はそう言って、土砂降りの中を走った。
俺が濡れるくらい平気だ。
あの小さな命が助かるのであれば…。
変な奴等にいじめられるなよ…。
そう思いながら走り、家路に着いたのだった。
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