優しい雨傘

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家に着いてから30分後ーーー 「だから、学校の奴が俺の傘を持って行ったんだって!!」 「今日はずっと雨だったでしょう!!そんな見え透いた嘘を()くなんて……暁斗(あきと)らしくないわね!!」 と母さんとちょっとした言い合いになっていた。 結局、ずぶ濡れで帰ったことを母さんから小言のように言われたのだ。 俺は風呂に入り、雨で濡れた身体を温めた。 バスタオルで髪の水気を拭き取る。 「(あの……猫の親子が濡れないなら別に良いだろうに…。)」 可哀想だと思うけど、目の前にいる人のことを考えるとどうしてもあの猫の親子は飼えないと思った。 すると玄関が開いた。 「ただいまー。」 「お帰り、小春(こはる)。って…その段ボールは何?」 妹の小春が帰って来た。 彼女の足元には小さな段ボール。 俺はハッとした。 「お(にい)、忘れ物~。」 「あら、その傘。」 小春は俺の傘までちゃんと持って帰って来ていた。 すると 「ミャーオ……ミャーオ……」 「ち、ちょっと小春!!その段ボールの中…」 母さんは確認するように覗き込む。 やはり、あの猫の親子だった。 「やっぱり猫じゃないの!!お母さんが猫嫌いだ……」 母さんはそれ以上は言わない。いや、言えなかった。 段ボールに書かれた 『拾ってやれ』 の文字を見て猫に憐れみの表情を浮かべた。 「お兄、助けてあげるんだったら、これくらいしないとね。」 「あのなぁ……」 俺は深い溜め息を吐いた。 「母さんが苦手なの知ってて、連れて帰るわけにはいかないだろうって思ったんだよ…。」 「暁斗…」 「それに父さんだってなんて言うか…」 「ん?俺がどうかしたか?」 『!!!』 小春の背後には父さんがいた。 父さんはこの家きっての猫好きである。 というか、動物全般には目がないくらいだ。
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