flavor of life

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ヒカルはスマートフォンの画面に表示されているトレンド1位のワードをタップする。画面の上に青いシークエンスバーが現れて、スマートフォンが画像を表示するためにダウンロードを始める。1秒も経たないうちにダウンロードが終わって画像が表示される。 その画像を見た瞬間にヒカルはスマートフォンから顔を背けた。画面いっぱいに表示された画像には打ち捨てられた人形のように横たわる三原博雅の姿が写っていた。 赤く染まった白い学生服、わずかに見える頬、争ってはだけた服から見える胸、だらんと投げ出された手足には傷んで赤黒くなってしまったトマトケチャップのような血がべったりとこびりついていた。 画像は一瞬視界に入れただけでも暴力的にぶんぶんと頭の中を巡って、色彩を司る感覚に血の色を塗りたくってきた。 ヒカルは小学校の図画工作の授業を思い出した。もう名前も思い出せない男子がパレットいっぱいに絵の具セットの中の絵の具全てをぶちまけて、絵筆でそれら全てを混ぜ合わせるいたずらをしている記憶だ。ヒカルはそのパレットをよく覚えていた。パレットのせいで男子の名前が思い出せないのだろう。混ぜられた絵の具は粘度と質感と立体感をもって、ヒカルの記憶の中でいつまでも乾くことはなかった。 今見た画像と記憶が混ざり合ってヒカルの頭にこびりついて離れなかった。その混ぜ合わされた絵の具は先生に見つかって流しで綺麗さっぱり洗浄され排水溝に流れていった。その得体の知れない色をした絵の具にようやく出番が回ってきたようだった。
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