flavor of life

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2017年5月1日(月) 朝、ホームルーム前 ヒカルは教室の扉を開けた。教室は休み明け特有の気だるさと活気を持ち合わせていた。暑い夏に吹く涼しげな風、寒い冬に浴びる暖かい日差しみたいに相反するものがぴったりとくっつきあっている心地よい空気だった。ヒカルは教室の中に一歩足を踏み入れる。クラスメイトたちはヒカルにに挨拶をする。 「おはよう! ヒカル」 「おはようございます、多田さん」 「おはーー、ヒカちゃん」 「おはよう、多田」 挨拶は全て好意的だった。声の中に敵は一人もいない。自分の座席にたどり着くまでにコロコロと表情と声色とを変えて、身振り手振りを加え一つ一つに愛想よく応えていった。 自分の座席に着いて、カバンの中から教科書やノートを取り出していると、目の前の席の女子がヒカルに話しかけた。顔と体が比較的に丸い女子だった。 「三原くんとのデートどうだった?」
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