愛という名の祈りを込めて

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「愛してるよ、アキ」 耳元でルークのしっとりとした声で囁かれる。自分の胸の奥がじんわりと熱を帯びる感覚がする。 「今更言うなって思うかもしれないけれど、無理やり連れてきて、辛い思いをさせてごめん。アキの生活を俺が壊した」 「…」 「でも、俺は…本当は喜んじゃいけない事なのに、アキが来てくれて、俺の傍に居てくれるようになって良かったって。そう思うようになってしまったんだ。だから」 ルークはふっと息を止めてから言葉を続けた。 「絶対アキにも俺に出会えて良かったって思って貰えるようにさせるから。ここに来て、ここで暮らせて良かったって心から感じられるように。だから、俺の気持ちを受け止めて。絶対後悔させない」 そう言ってルークは俺を抱き締めようとしてきた。 今は自分の鼓動の音を聞かれたくない。そう思って俺はルークの肩を掴んで引き剥がした。ルークは拒絶されたと思ったのか、口を引き結んで目を細めている。 「なぁ。惚れたら負けって言葉知ってる?」 「うん」 「そかそか。じゃあいいや」 俺だって今はこの生活でもいいって思えるようになった。きっと元の世界でホストとして生き続ければ、雁字搦めの偽りの人間関係にいつか耐えられなくなっていたから。素の俺に欲情してくれるルークは俺にとってはもう殆ど依存対象だ。 でも、ルークが俺の気持ちに気付いていないのなら、それなら今はもう少し意地を張っていたい。俺の態度の全てまでルークに堕落出来るまで、口説き続けて欲しい。そう思ってしまう。 「言っておくけど俺の前いた世界の公務員の月収じゃ、到底俺の収入には届かないぜ。俺はそれくらいの生活をしてた」 「うん…ごめん」 お金に変えられないものを今は得られているからいいんだけど。俺はルークの鼻に自分の鼻を擦り寄せた。 「後悔させたくないなら、一生かけてお前の心が枯渇するくらいめいっぱい俺を愛せ。次またルークに捨てられたら、その時が俺の死ぬ時だから」 「枯れないし、捨てないよ」 ルークの強い眼差しが至近距離で俺を見据えた。 いつかルークに飽きて捨てられる恐怖を払拭出来ない俺をこうして安心させ続けて欲しい。俺の今の望みはそれだけだ。 「何度でも試せばいい。俺は絶対にアキを諦めない。何があっても」 そう言ってルークは俺の両目を隠した。視界が暗闇に覆われる。そのせいでルークの声が余計に聴覚に響いて聴こえる。 「俺がアキの全てを奪い尽くしてみせるよ」 その言葉はあまりにも優しくて、残酷で…。ルークに向かって手を伸ばしそうになるのを、俺はじっと耐えた。 --------キリトリ線-------- お世話になっております。零(ぜろ)です。 いつも応援して頂きありがとうございます!本日、スター特典を公開致しました。2人の一日のスケジュールを記載させて頂いております。本編で書く機会のないアキくんの苗字等も乗っておりますので、気になる方はぜひ覗いて見てください。 それでは、本編共々、引き続きよろしくお願いします。
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