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「アキ」
ルークに名前を呼ばれる。それだけで余計に鼓動が早くなる。バレたくないから勘弁して欲しい。心臓の音がルークに伝わってしまわないように離れないと。そう思うけど、身体が思うように動いてくれなくて、俺はルークの腕を両手で掴んだ。
「最初からルークとして迎えに来てくれれば良かったのに」
そしたらルカもコルネリウスも勘違いしないで済んだ。何でこいつはこんな面倒な事をしたんだ。俺はそう思って文句を言った。
「俺…」
ルークの俺を抱き締める力が少しだけ強くなる。
「アキに出会ってから、初めて人生をやり直したいと思ったから。アキとの関わり方はいつも上手くいかない」
ルークが少しだけ掠れた声で言った。
「どんなに後悔しても、同じ時をやり直したいと思っても、俺も時計の針は逆さには回せない。それなら変わろうと思った」
「何を後悔してんだか…別人になって俺を懐柔して満足行くの?お前」
「アキの全部がそれで手に入れるなら満足しちゃうかも」
「歪んでんなー」
若いってこういう所が怖い。だけど、なんだかルークから凄い告白を聞いてしまっている気がしてニヤけてしまう。
「お前、俺の事が好きなの?」
確信出来るような言葉を聞きたくて、俺はわざと訊ねてみた。
「好きだよ。アキが好き」
「俺の事どうしたい?」
「自分だけの女にしたい」
「いや、俺は男だからな」
ルークが俺に執着出来るならそれでもいい。そう思ってしまう。俺がルークの女になれば、可愛がってもらえるのなら…いや、愛してもらえるのなら。それなら…
「アキは?」
「えっ」
逆にルークにそう聞かれるなんて思わなかったので、純粋に驚いてしまった。俺は少しだけ戸惑う。だけど、すぐにルークに言葉を伝えた。
「ルークのせいで、ルーク以外の人間が隣にいる事がしんどくなった。今までは誰でもよかったのに。だから…」
声が震えそうになる。自分の本心を言うのはこんなに怖いんだ。でも、言わないとこの先には進めない気がして…。俺はルークに思いを伝えた。
「ずっとそばにいて欲しい」
ルークの傍にいられるのなら、自分はどうなっても構わない。たとえ未来がアレでも、ルークが俺を好きでいてくれる事以外は何も要らない。
「うん。いつまでもアキと一緒にいる。俺を信じて」
また涙が出そうになってしまう。歳かなぁ。でも、好きな人の前で格好悪い所は見せたくないなぁ。
俺は嗚咽がバレないように、きゅっと口を結んだ。
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