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晴恋
「雨…」
ルークと一緒にハイデンから出ると、外は雨が降っていた。そういえば榊が降らせたんだっけ。しとしとと優しく降り注ぐ雨は、なんでか嫌な感じがしない。
俺は振り返ってハイデンの入口を見てみる。こうやって見るとただのホテルだ。この先に結構な規模の街があると思うと、少しだけぞっとする。
「この街を一掃、か」
「…」
以前ルキ…もといルーク本人から聞いた話を思い出した。この街に住んでいる人を一掃したのはルークだって。
「宝石って何処でも高価なんだな」
「以前よりはかなり安価になった。もう密売されなくなった上に、公務員としてコルネリウスがいる」
「成程」
「…まだ安いとは言えないけど」
ルークはじっと建物を見上げている。ルークにとってこの建物はどんな風に映っているんだろうか。
「ごめん。時間が無い、転移の魔法を使う」
ルークは建物から目を逸らして俺の両手を握った。
「あ、っちょ、いやだ!いきなりそんな…ぁ…っ!!」
ルークの手のひらから自分の体に何かが流れ込んで来るのがわかる。それが血液中を巡って、体温が上がる。
くそったれ!もっと心の準備をさせれくれ…!どうしようもなくなった俺はルークの手を握り返しながら目を閉じた。
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