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晩餐会
12月8日。イターノ中隊長の部屋を訪れると、伯爵と騎士ランスは深刻そうに何かを話しているようだった。
『イドマ隊の、ハルトです。今…よろしい、ですか?』
そう尋ねると丁寧にドアが開き、ランスはキリッとした表情で出迎えた。
「どうした?」
『イドマ隊長、から、書類を、預かって、います』
「わかった。預かろう」
ランスは書類をイターノ隊長に差し出すと、イターノは白くきれいな指で1枚ずつ中身を確認し始めた。
「ありがとう」
『では、失礼します』
ドアを閉めようとしたら、再びイターノとランスは浮かない様子でヘイトを出した。これは困惑している時に流す気だ。僕は手を止めると振り返った。
『あの…何か、あったん、ですか?』
そう聞き返すと、イターノは髭をいじりながら言った。
「実は、10日に晩餐会があるのだが…お抱えのピアニストがけがをしてしまってね」
ランスは僕に近寄ると、そっと耳元で囁いた。
「ピアノを演奏できる者に心当たりはないか?」
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