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なんとか顔を横に向けるので精一杯だった。
栗山の唇が俺の頬に触れ、硬く目をつぶった。
分厚い唇がほほに吸い付いてくる!
大事件発生!
唇から舌が伸びてきて、頬を舐められた。
ファーストキスで、ノックアウト。
ふらふらした。
栗山がファーストキスの相手だなんて、死んでも冗談にならない。
瞼を開くと、その視線の先に、茅ヶ崎が、どこかほっとしているのが見えて安心した。
茅ヶ崎本人も、唇と唇のキスは避けて欲しかったのだろう。
「彼女が美人だと、最高だぜ。頬もすべすべしてて、気持ちいいわ。でもよ、怯えんなよ。俺達付き合って、もう三ヶ月になるんだからさ。雪菜は俺にとって自慢の彼女だよ」
「私にとっては、最低の彼氏ね」
これは、俺の言葉というより、まさに茅ヶ崎の体が反射的に発したものだと俺は理解している。
体に巻きつく腕の力が緩んだのを感じると、一瞬の隙を見て栗山から一歩離れた。
栗山は、舌打ちすると丸顔の不細工な男を見下したように睨みつけ、去って行った。
「ベー」
俺は舌を出して見送った。
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