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栗山は、ハンバーガーを食べ終えると、ゴリラ顔のくせに意外と潔癖性なのだろう、手を洗うために、トイレに必ず向かう。
「今だ!!」
待ちに待ったタイミング。
俺は席を立った。
――ここからが、本番だ。栗山をぎゃふんと言わせてやる。二度と茅ヶ崎に近づけないように。
ひとりでスマホを触りながら栗山がトイレから戻ってくるのを待つ女性の元へ、向かう。
茅ヶ崎が、カウンターの奥から心配そうにこちらを見ている。
『心配はいらない』そんな風な視線を茅ヶ崎に送ると、栗山が座っていた席に俺は腰を下ろした。にっこりと微笑んで、口を開く。
「あっ! 栗山君の彼女さんでしょ? いつもここで仲のいいところ見かけるから。そうじゃないかなって思って!!」
突然話しかけられた女性は、一瞬目を丸くしたが、茅ヶ崎の容姿は初対面の人と話す時に、とても効果を発揮する。全く相手に、不信感を与えない清潔さがある。
「私ね、栗山君と同じ学校なの。彼、学校でもファンの子が多くてさ、彼女に選ばれたあなたみたいな人が羨ましいわ。もう付き合って長いの?」
彼女は、にっこり笑って口を開いた。
よしよし。作戦通りだ――――。
罠だとも知らずに、べらべら喋り始めたぞ。
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