120人が本棚に入れています
本棚に追加
/556ページ
「男の子の神楽君には、分からいのよ。女の子は、海に来たりすると、気をつけてるものなの。知らない男性が声をかけてくることだってあるの。それに、夜道を歩く時は、スマホで110番にすぐにかけられるようにしながら歩くとか。神楽君も今は、女の子になってるのだから、気をつけて欲しいの。突然何かの事件に巻き込まれたりしないためにも、自分で注意することが大切なの。事件は、ニュースだけの世界のことじゃないのだから」
軽率でした。
反省します。
「これから気をつける。でも、もう大丈夫じゃないのか?」
そっと、顔を出して周囲を伺う茅ヶ崎。
「そうね。もう大丈夫みたい。もうすぐ夕焼けね。日が沈むのを見て行きましょう」
「賛成っ!」
水平線に太陽が沈んで行くのを見ていると、こんな時間が永遠に続けばいい。本気で、そう思った。
人生って、不思議だ。ぼっちの俺が、まさか、こんな風なことを思う時がくるなんて……。
寄せては返す、波の音が、頬を撫でていく。
遠く、虫の音が聞こえ、夕日が水平線に消えていく。
その瞬間の、どこまでも、淡くて甘い時間は、一生忘れないだろう。
いつの間にか、二人の距離はとても近くなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!