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……っ……え……。
「自分でいうのもへんではあるのだけれど、私の胸って結構かたちがいいと思うの。私が溺れていたのを助けてくれた命の恩人なのだから、二・三回揉んでみても良かったと思うの。入れ替わった、というご縁でもあるわけだし」
「触るとか、揉むとか、ご縁とか……なんだよそれ!」
さっきは、絶対触るな! とか言ってませんでしたか。
「そんなに、困った顔しなくても、大丈夫よ。入れ替わってるわけだし。神楽君、一度くらいは触りたかったのでしょ。女性のおっぱいとデリケート部分を。確認というわけではないのだけれども……」
茅ヶ崎が、ゆっくりと顔を近づけてくる。
俺を覗き込むその瞳。
「神楽君は、童貞なのでしょ?」
正解です。でもなぁ……。
「いきなりなんだよ! それに、童貞って、なんでそう思うんだよ」
目を尖らせて言うと、茅ヶ崎は視線を外した。
それから、校門に向かって歩き出す。
「だってどこからどう見ても、童貞だと思うの。一生童貞のまま死んでいくなんて可哀想じゃない」
ずけずけとした物言いで、一体こいつは何様だ。
「永遠に恋人が出来ないみたいに言うなよ」
「いいえ、間違ってないわ。神楽君は、一生、生涯、童貞なの。もう一度言ってもいいわ。一生、生涯、童貞なのよ。もしよかったら、貴族という言葉をつけてあげてもいいのよ」
言葉に含みを持たせるように、茅ヶ崎は続けた。
「童貞貴族」
振り向きざまに、決め台詞。
むむむむ……ぐぐっ……。ひるんでしまった。
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