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「今、神楽君は他人事みたいに言ったのだけれども、どちらかというと、この問題は、私よりも、茅ヶ崎雪菜の体に入ってしまっている、神楽君の方が今となっては関係があると思うの。つまり、問題が起こっているのは、神楽君と言ってもいいわ」
「お前ってやつが、良く分からん……」
いや、待て待て。勉強ができて、人脈もある茅ヶ崎のことだ。よく考えろ。
この状況でもしかすると、あれだな。
読めてきたぞ。これは、面倒を押し付ける手口か……。
茅ヶ崎が、下駄箱の方に視線を向けた。
「ほら、来たわよ」
「だから他人事みたいに言うな」
「しょうがないでしょ。もう神楽君の問題なのだから」
下駄箱の方から茶髪にソフトモヒカンの栗山が歩いて来るのが見えた。
チャラチャラした見た目のせいか、男子生徒からも敬遠されている。俺なんかは、近づくのさえも嫌だ。栗山は俺のことを、同じ学校の生徒だとも知らないだろう。
しかし、俺がどうして栗山の名前を覚えているかというと、バイト先の常連客で、隣の学校の高宮高校の彼女を連れて、いちゃいちゃしながらバイト先にやってくるからだ。
……待てよ。その子が彼女だと思っていたが、茅ヶ崎が付き合ってるって言ってたな……。
話しがややこしくなってきたぞ。
それが俺自身の問題だ。と、言われているわけだし……。
詳しく茅ヶ崎に栗山との関係性を問いただそうと視線を向けると、妙にばつが悪そうに目を細めて困っている。どういうことだ……。
栗山と茅ヶ崎なんてどうみても釣り合わないぞ。茅ヶ崎と言えば、学年一の美人だ。それが、ドブネズミのような顔の不良男子と付き合うなんて、想像もできない。それとも、そういう趣味があるのだろうか。まさか……。
「雪菜!」
金髪ドブネズミが呼んでますけど。
そして、栗山にとっての茅ヶ崎雪菜は、当たり前ではあるが、入れ替わっている俺ということになる。さて困った。どうする……。
「おーい、雪菜!」
しゃがれた声でこちらに向かって来ている。下の名前で呼び合う仲ってことは、それなりに仲いいんじゃないのかよっ。
再び茅ヶ崎に助けを求めようと、視線を投げたが、俯いている。ますますどうしたらいいのか分からなかった。これじゃ茅ヶ崎本人からの、助けは期待できない。が、やっぱり意味がわからない。
――――くっそ!
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