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確率五分の一
雨の午前二時、コンビニに行った。僕の他には客が四人。
発泡酒二本とチーズ鱈と雑誌を一冊買って、店を出る。
「ありあざーす」
店員の声が自動ドアの向こうに閉じ込められ、代わりに雨の音が響く。
傘を取ろうとして迷った。
「あれ? どれだっけ……」
傘立ての中の透明なビニール傘は、五本全部同じに見える。
……まあ、どれでもいいか。
一本引き抜いたら、客の一人が僕の横を足早に通り過ぎた。
降りしきる雨の中を、傘もささずに遠ざかる。
グレーのシャツが、みるみる黒く変わっていく。
(ヘンな奴)と肩をすくめたら、靴下がグシュリと音をたてた。
見ると、手に持った傘の先から水が滴り、スニーカーを濡らしている。
ポトン、また一雫。
薄汚れた白いスニーカーに、赤い水玉模様がじわり、広がっていく……。
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