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かたん、と玄関前で音がした。
何度か聞き慣れている金属の音。
郵便だ。と私は思った。
いつも取り出しているため、何も考えず、玄関前へ立ち、届いた郵便を受け取る。
中には白い手紙があった。
今、「白」は見たくなかったのに。
しかし、大事な手紙かもしれないのでその白い手紙を手に取り、宛先を見る。
宛先は、大嫌いな白の似合う大嫌いの彼からの手紙だった。
私は手紙からしわが出るほど強く握っていた。
(なんで、今さら…)
私から湧き出てくる感情は、嬉しさなどではなく、単純な怒りだった。
よりを戻すのならば、直接会えばいい。彼が素直な気持ちを話してくれれば、たぶん私は納得する。
それがどんな結果でさえ。
それくらい彼が好きだった。
でも、今は、この状況は私の中の「彼」から遠ざかる。
彼には直接話すという度胸が無いことがこの手紙で分かる。
私にとって手紙を書くことは「逃げの一手」だ。
私の中の彼はそんな逃げるような事をしないと思っていた。思っていたのに、彼はした。
私の中の彼が、私の頭の中で崩れる音を立てた気がした。
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