ファンタジー × 恋愛[第一作]

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だけど、彼女が手紙を書くなんてことがあるだろうか? 彼女だとしたら、直接話すことを好むだろうし、今までの彼女らしくない。 でも、この手紙の色を、黒を使うのは彼女しかいないはず。 一体、どういうことなんだろうか? 僕は封を切らずにそのまま考えた。 彼女がこの手紙を送ってきた意味を。 まず、考えられるのは、いや、最悪な考えとして、 「私が嫌いな手紙を書くくらいあなたが嫌い」 というメッセージだろうか。と考えた。 もしそうだとしたら納得できる。しかし、僕の気持ちはこの黒より暗く沈むだろう。 実際に少し沈んでいるのを感じている。 僕は最悪な考えをやめ、他に考えられることはないかと彼女の性格や、彼女との生活を思い返す。 (そうだ、思い出した) 僕が彼女に手紙を書いてもいいか質問したことがある。 そしたら彼女は 「手紙なんて逃げの一手よ。そんなことするくらいなら直接言いなさいよ」 と言ったのだ。 それが彼女が手紙を書かない理由だ。 それを聞いた僕は確か、彼女に素直な気持ちを伝えたんだ。 君には黒が似合うこと。 そんな君に惹かれたこと。 君が大好きだということ。 (これを聞いた君は黒ではなく、真っ赤になっていたっけ…) 僕はふっと笑みがこぼれた。 そして僕はその手紙を自分の手で何度も引き裂いた。 紙のちぎれる音が何度もする。 やがて、自分の手ではちぎれないくらいに細かくなった。 そして僕は白い便箋をとりだし、さすがに白いペンでは、文字が見えないため、仕方なく白に近いグレーのペンで一言を添えた。 彼女に会おう。 そのための一手。 大事な彼女ともう一度 もう一度、この想いを伝えるために。
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