相合い傘を貴方といつも。

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サーーーーーーー。 止まない雨が目の前で音をたてる。 いくら傘が嫌いだからといっても梅雨くらいは持ち歩くべきだった。毎回そう想うのに。 「この傘、良ければどうぞ。」 「え!?」 喫茶店の屋根に雨宿りしていると男性が私に傘を差し出した。 「喫茶店の中から姿を見たので。この傘、好きな人へ持参したのにフラれたところなんです。行き場の無い傘なので、良ければ。」 「あ、ありがとうございます…」 「傘がね、嫌いな人だったんです。人のお役にたてたなら良かったです。」 「濡れずにすみます。私も傘が嫌いで持ち歩かなかったから、雨宿りしてました。」 「喫茶店で時間を潰すという選択肢はなかったんですか?」 「ふふふ、普通はそうですよね。だけど、この喫茶店で私フラれたんです。なのに気付いたらまた来てた。」 「「待ち合わせの喫茶店だった」」 重なる声にお互いの目が合う。 「え?」 「傘が嫌いで、この喫茶店が待ち合わせ。貴方の好きだった人と僕の好きな人はきっと同一人物です。」 「そんな…偶然…」 「嘘ですよ。」 「嘘?」 「雨みたいに号泣しているから、泣き止むきっかけを考えて、なんとなく嘘ついてみました。」 「どこまでが嘘なんですか?」 「全部。だって、貴方がここで雨宿りしてるの今日が初めてじゃないでしょう。」 「どうしてそれを…」 ここ数日、雨の度に雨宿りしてた。 「貴方は傘が嫌いで持ち歩かない人だと想って、だから、この傘は貴方へ買ったんです。」 「わざわざですか?」 「そんな切ない顔で雨を見つめて、気になる人になって。貴方に似合う傘を見つけて、話しかける機会を伺ってました。新しい恋、僕としませんか?」 何が嘘で何が本当かいまいちわからなかったけれど。 だからこそ惹かれたのかもしれない。 「僕と逢うときは傘を忘れていいんですよ?」 「なぜ?」 「相合い傘するからに決まってるじゃないですか。」 傘が嫌いで雨が嫌いで。 だけど彼に出逢って、傘も雨も好きになった。 「傘があるとね、他にもいいこと有るんですよ?」 「なぁに?」 「こうして傘がキスをするときの貴方の顔を僕だけに独り占めしてくれるんです。」 ちゅ…と優しいキスを落としてくれた雨の日
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