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君に会いたい
暗い森に一人、僕は立っている。
少し肌寒くてここがどこかも分からなくて一人、ポツンと立っていた。
そうしているうちに僕はぼんやりとなぜこんな場所にいるのかを思い出した。
君に会いに行く。
そう約束したこと。
そのためにこんな森の奥までやってきたんだ。
仕事も友達も全部ほっぽってここまで。
空高く覆い茂る木々は、太陽の光も通さない。
今が昼なのか夜なのかも分からなかった。
ふと君が言っていたことを思い出した。
毎朝、僕と自分のために目玉焼きを作ることが君の日課で、あの日も美味しそうな目玉焼きを焼きながら、
「小説家、なれるといいね。私は君の描いた物語が大好きだから」
その言葉はどんな時でも僕を勇気付けてくれた。
もう少しで君に会える。
そのことが僕の胸を高鳴らせた。
しかし、その時僕は遠くに人影を見た。
人がいる。
急に怖くなった。
僕はゆっくりと近づいていった。
木々の間を縫って歩いた。
木々の間からわずかに射す光がその人影を照らした。
そこで僕は初めて、すでにここがこの世じゃないことに気がついたんだ。
君は僕を見て悲しそうに泣いた。
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