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「ありがとうございます。次に、お日にちなのですが。こちらは天気予報との兼ね合いになります。」
「あ、あの、決まってないのですわ」わたしは握りしめた部分が汗でがべっとり濡れているのに気づいた。「かしこまりました。決まり次第、ご連絡いただければ結構です。ちなみに、ご希望の降り具合はございますか。」
「は。と、もうしますと。」
「こちら、いくつか種類ございまして、大きく三つに分けると、ゲリラ豪雨、大雨、小雨となっております。雨の具合と長さによって、お値段も変わってまいりますので…」
「一番安いので、おいくらですか」
「はい、一番安いものですと、状況にもよりますが、およそ五千円ほどですが…」
わたしはそこでがちゃんと電話を切った。五千円といったら、わたしにはとんでもない大金だった。
茜ちゃんは、「どうだったの。」と目を光らせながら尋ねてきた。わたしはそんな茜ちゃんに対していささかの不満を覚えながらも、「向こうから切られた」と言った。「頭のおかしな人?」
「うん、多分」わたしはドキドキしながら答えた。
「えーそうなんだ」茜ちゃんは目をらんらんと輝かせた。「そんなやつに、住所と本名、教えちゃって、大丈夫?」
わたしはとっさに反論できずに、俯いた。そして、調子に乗って住所を教えてしまったことが、本当に恐ろしくなってきた。けれども茜ちゃんは「まあ、なるようになるさ」と言ったきり、それきりその話題には触れなかった。
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